【能登×地方活性】ゲストハウス「FREEDOM2」オーナー 石田 智宏さん特集(前編)
国内外から高い評価を受けるゲストハウスのオーナーが挑む、音楽ライブでの地方活性。『能登に遊び場を!!発信する場所を!!僕らが僕らで創る!!』
エスダムスメディアJAPANによる「ベンチャー・女性の活躍・地方活性化」がキーワードの特集記事、今回のテーマは「地方活性」です。
石川県七尾市の温泉街に、日本で唯一の“ライブハウス併設型ゲストハウス”があります。その名は「FREEDOM2 ROCK Village(以下、FREEDOM2)」。今回取材をお願いしたのは、オーナーの石田 智宏さん。ロックバンドのヴォーカル・バックパッカー・カフェ経営・ゲストハウスのオーナー・カンボジアの貧困層支援に取り組むなど、過去現在ともに多彩な活動をされています。前編・後編の2部に渡り、石田さんの活動や地方活性への想いについてご紹介します。














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バンド活動と旅が今の自分を作っている
これまでの生き方が全て今に繋がっているという石田さん。まずは、石田さんの生い立ちや「FREEDOM2」開業までのエピソードについてご紹介します。
石田 智宏(いしだ ともひろ)さん
石川県志賀町出身。1979年生まれ。中学を卒業後、数年間引きこもりになる。しかし、「バンドがやりたい」という夢ができ引きこもりを脱出。ロックバンド(BOSEMISSILECUSTOM/ボーズミサイルカスタム)でヴォーカルを務め、能登でバンド練習、金沢を中心にライブ活動を行う。バンド活動に打ち込むが、次第にお金が必要になり、犬の散歩中だった近所の老人ホームの理事長に路上で声をかけ、見事、介護職に就職する。20代は介護の仕事をしながらバンド活動に明け暮れる日々。主催ライブを定期的に開催。金沢AZ(ライブハウス)での年越しライブの企画を任せてもらったことも。
―音楽から教わったこと
石田さん)今の僕を作っているのはこのバンド活動だといっても過言ではないです。「待っていても誰も見向きもしない」「自分で動き出さないと何も起きない」という行動することの大切さを、音楽を通して教わりました。2009年、20代最後となる29歳の年。「自分の人生はこのままの生き方でいいのか」と疑問に感じるようになり、「この1年間は人生の夏休みにしよう」と決め、介護職を退職。以前から興味のあった海外に、バックパッカーの旅に出かける。
まず訪れたのは、映画「THE BEACH」の舞台となったタイのピピ島。10日間の男二人旅。日本で過ごす10日間とはまるで違う、濃く楽しい時間を過ごす。次に訪れたのはバングラデシュ。バンド活動の中で、バングラデシュに小学校を建てる支援をしており、その小学校が完成したため同行した。また、その際にカンボジアに立ち寄り、現地のツアーガイドのソチアットと仲良くなる。歴史的建造物を訪れ、その場所でしか見ることのできない光景を見て、ソチアットの内戦の体験談を聞き、今生きていることを強く実感する。痩せ細った現地の子どもたち、庭に地雷が埋まっている現状に衝撃を受ける。(その後現在に至るまで、カンボジアには20回近く訪問し、服を寄付するなどカンボジアの貧困層支援に取り組んでいる。)
また、これまでは友達との旅行だったが、2010年に70日間アジアを一人旅し、さらに広い異文化に触れ、人生について考える。―旅で感じたこと
石田さん)日本と全く違う生活や文化に直接触れることで、今まで当たり前だったことや価値観が全て崩壊しました。特に70日間のアジア一人旅は、僕の今までの人生を変える大きなきっかけになりました。インドのバラナシでは、火葬場で人が燃えていくのを一日中眺め「自分の人生にもやがて終わりがくる」ということを感じ、カンボジアでは「日本には自分のやりたいことが選択できる自由がある」ということを強く感じました。残りの人生を考えた時、自分が後悔しない選択をしようと海外旅を通して強く思いました。
誰でもできることではなく、僕にしかできない事をしようと思い、仕事を辞めてから今まで過ごしてきた気がします。40代の今、20代の時よりも自分の人生を生きている実感が強くありますし、自分の責任や、自分の誇りも強く感じられるようになりました。もちろん、僕の人生の旅はまだまだ途中なのでこれからもいろいろと試行錯誤することはありますが、人生終わりを迎えた時に笑って、自分の人生をやり切ったと思えるような未来に進めればと思っています。バンド活動で学んだ行動力やイベントの企画運営、旅で感じたことや世界各地で多くのゲストハウスに泊まった経験から「能登にゲストハウスを作りたい」という新たな夢ができ、2011年に石川県七尾市和倉町にてカフェ「BASE TO FREEDOM」を立ち上げる。何も分からない素人が3人集まり、「自分たちの居場所を作る」という目標を目指して仲間と日々試行錯誤。 ―カフェ「BASE TO FREEDOM」について
石田さん)20代の時に貯めたお金や融資などをフルに使い、総額1000万程で開業しました。
能登は本当に若者の集まる場所がありません。昔、金沢市に住んでいたことがありますが、金沢は若者が集まってワイワイしている。街の飲み屋に行っても若者がいっぱい。一方、能登の飲み屋にはおじさんしかいない。ゲストハウスの許可を得るまでに時間もかかるだろうし、まずは若者が集まることのできるカフェを七尾で作りたいと思いました。
また、能登にはバンドが練習できる場所がなく、発表する場所もありませんでした。場所を見つけることができても、そこにいるのはまた年配の方ばかり。年代が違うから当然演奏する曲も違えば、雰囲気も合わず…。そこに混ぜてもらうこともありましたが、結局、金沢まで行かないと思いきりバンドができないという状況でした。なので、開業したカフェでは、ライブを開催したり、朝活・夜活などの勉強会を行ったり、若者が自由に発信できるようにしました。
カフェ経営をしながらゲストハウス開業にこぎつけるのは難しく、本格的にゲストハウスを開業しようと、カフェを閉業し、2014年に同町の高台に移転。ゲストハウス「FREEDOM2 ROCK Village」を開業するための準備に取り掛かった。築60年、元フィリピンパブのお店だったライブハウスのある物件。元々目をつけていた物件だったものの、あちこちのガラスが割れ、建物はツタで覆われ、中は物で散乱し、絵にかいたような廃墟だった。 修繕前の「FREEDOM2」
―「FREEDOM2」開業までのエピソード
石田さん)「FREEDOM2」を立ち上げる際は本当にお金が無かったので、一人で必要最低限でやりました。応援して助けてくださった仲間も大勢います。毎日、館内の掃除と壊れている場所を直す日々。1年程経ってようやくイベントができる場所になり、ライブイベントや朝活などをして少しずつ人が戻ってくるようになりました。
初めは怪しげに思われることもありました。能登島で脱法ドラッグ工場が摘発された時、「FREEDOM2でも脱法ドラッグを作っているんじゃないか」と疑われて、警察が調べに来たこともありました(笑)その後3年程経った頃から民泊をして、その翌年に宿泊業の許可を貰い、今の「FREEDOM2」になります。民泊を始めた際に泊まりに来た宿泊客(以下、ゲスト)の言葉が印象に残っています。「必要最低限の施設で大丈夫。ゲストハウスにいいものを求めて泊まりに来ていない。海外や自由を感じられる空間、そして、それが好きな人が集まる場所であれば大丈夫だ」と。その言葉を聞いて、ハッとさせられたことを今でも覚えています。今は少し余裕が出てきたので、必要最低限ではありませんが、今もこの言葉を大事にしています。海外や自由を感じられる空間、そして、それが好きな人が集まる場所にすることを最優先にし、物事を決めています。
- ゲストハウスは、多種多様な人との出会いの場
ゲストハウスの特徴には、「アメニティサービスの提供がない・食事無しの素泊まり・宿泊費が安い・ゲスト同士交流できるスペースがある・国籍年齢性別問わず多種多様な人が集まる・基本的に相部屋での宿泊」などがあります。「FREDDOM2」は、まさにこの通り。とはいえ、ゲストハウスに馴染みのない人にとっては、そこがどんな場所なのか想像し難いと思います。まずは「FREEDOM2」の施設、訪れるゲスト、ゲストハウスの醍醐味についてお聞きしました。
FREEDOM2 ROCK Village
―「FREEDOM2」の施設について教えてください。
石田さん)「FREEDOM2」は2階建てで、1階には受付、共同のトイレ・浴室、宿泊者が集まり語らうことのできる共有スペース、自由に使用できるキッチンがあります。そしてすぐ隣の部屋には、「FREEDOM2」の特徴である約30人収容可能なライブハウスとライブBarがあります。2階は客室となっており、男女別の大部屋(相部屋)最大4名×2室、個室部屋 最大2名×2室があります。また、2020年には外の敷地に最大5名宿泊可能なファミリータイプのバンガローを2棟設置しました。
アクティビティとして、夏には敷地内に大型プールを用意して宿泊者に楽しんでいただいています。花火、流しそうめん、焚火なども人気で、BBQは季節関係なく希望者が多いです。今後は敷地内にサウナやキャンプ場を整備したいと考えています。
―「FREEDOM2」には、これまでどのくらいの人が訪れましたか?
石田さん)これまでに国内外から1万人弱のゲストが訪れました。8割が男性客。海外のゲストハウス経験がある人、旅慣れしている人、どこでも寝られる人が多いです(笑)ゲストにはワイワイしたい人、静かにしたい人、夜遅くまで議論したい人、早く寝たい人などいろんなタイプの方がいますが、皆さんゲストハウスという場所に慣れているためか「人に迷惑をかけずに過ごそう」という思いのある方が多いですね。
ゲストは自分の国にマークを付ける。世界各地にマークが付けられている。
―外国人ゲストも多いですね!世界地図にマークがいっぱい!
外国人ゲストは、何度も来日経験のある方や、長期で日本に住んでいる方ばかり。初来日でいきなり石川県に来たというケースは少ないですね。東京、大阪、京都などの有名都市に行った経験のある人が「次は金沢に行ってみようかな。そのまま能登にも行ってみようかな。」となるケースが多いです。外国人ゲストに話を聞いたところ、地図で日本を見た時に、中央にある出っ張り部分(石川県)に、とても興味がわくそうですよ(笑)
中国から来た大家族のゲスト
―どういう理由で「FREEDOM2」に来られる人が多いですか?
「安いから泊まりに来た」が圧倒的に多いです。ツーリングで能登にやって来る人も多く、バイクやサイクリングで能登を回って、「泊まること以外にお金を使いたい」という話をよく聞きます。しかしながら、選んだきっかけは安さでも、ゲストハウスという特徴上、人とのコミュニュケーションを楽しみにして来られる方が多いのも事実です。能登でツーリングやマラソンなどのイベントが開催される時は、ゲストの数がぐっと増えます。共通の趣味を持つ人達が自然と集まるので、ゲスト同士初対面でも打ち解けやすく、マニアックな専門用語も飛び交っています(笑)ホテルや旅館では味わえないコミュニケーションができるのもゲストハウスならではの良さではないでしょうか。
週末・GW・夏休み期間は、一人旅のゲストも多いです。ゲストハウスでの出会いや交流を大事にしてほしいので、個人や少人数のゲストに来てもらえるのはとても嬉しく思います。ここで出会い、意気投合し、そのまま一緒に旅に出かけたという人達もいます。
バイクで訪れるゲストも多い
―ゲストハウスに泊まったことのない人に向けて、良さや醍醐味を教えてください。
石田さん)醍醐味は人との出会いですね。長期滞在の方もいますが、基本的には一晩だけのお付き合いのため、宿泊者同士で何でも打ち明けて話をしています。ゲストハウスに来るのはポジティブな人が多いので、悩みの返しもポジティブ。相手を否定しない人が多く、互いの考えを尊重し合っていて素敵だなぁと思わされることが多いです。
共有スペースでのにぎやかな食事(コロナ前)
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「若者が自由に発信できる場所」が、能登に人を呼び集める
―ライブハウスで目玉イベントとなっている「能登大作戦」について教えてください。
石田さん)「能登大作戦」というライブを「FREEDOM2」で定期的に開催しています。『能登に遊び場を!!発信する場所を!!僕らが僕らで創る!!』をモットーとして、自分たちで自分たちの居場所を作るイベントです。参加者全員でこのイベントを作って育てていくことを大作戦とします。能登の表現者たちが表現をするための数少ない貴重な場所、そして好きな方が集まれる、素敵な場所にできるように皆さんと創っていきたいと思っています。これまで10回行いました。能登という田舎に住む人のためのイベントだと思います。田舎だからやれないじゃなく、田舎だからできるイベントを作りたい!無いなら自分たちで作ってやれ!のDIY精神ですね。僕はこれまで、音楽やバンド活動を通していろんなことを教わってきたので、恩返しの気持ちを込めて主催させていただいております。
最近は、金沢から出演を申し出るバンドも多いです。SNSでライブ情報を知り、「出たい!」と。金沢からバンドがやって来ることで、能登でバンド活動をしている人達が大いに刺激を受けています。そして何より、来場して若者の刺激を受けたおじさん世代が「自分たちも頑張ろう!」と言って張り切っており、そういう場所があるっていいなと感じます。そういう体験ができるのは、能登でここだけだと言えます。
来場者は地元住民だけでなく、金沢のバンドが金沢の友人をたくさん連れて来てくれます。「能登にこういう場所があるんだ!知らなかった!次はゲストハウスに泊まりに来ます!」と、後日、金沢から再来してゲストハウスに泊まりに来てくれる人も多いです。
―バンドマン応援企画、宿泊代「ライブ払い」。2019年から「週末に泊まるゲストが、宿泊日にライブハウスでパフォーマンスを披露すれば宿泊代無料!」という取り組みを始められたそうですね。こちらは今も募集中ですか?
石田さん) はい、現在も募集しています。新型コロナウイルスの影響で希望者は減りましたが、これまでに日本各地から10組の申し込みがありました。
「ライブ払い」を始めたきっかけは、せっかくライブハウスがあるので、そこでライブをしてくれる人が欲しかったから。ゲストに「今日はライブしていないの?残念」と言われることもあったので、「ライブしたい人が来てくれたらいいじゃん!」と思い、企画しました。「ツアーに出たいけど、お金もないし、ライブハウスの場所も分からない。」バンド活動をしていた当時はそんな不安もあったので、同じような不安を解消できたらと思います。こうした縁で能登に来ていただき、能登のことを知ってもらえたら嬉しいです。「ライブ払い」希望者の方は、ぜひ楽器を持って能登に遊びに来てほしいです。そして、そんな方が能登に触れて、また、日本各地に能登を広めていただけたらなと思います。
※「ライブ払い」には条件があります。「FREEDOM2」までお問い合わせください。
石田 智弘さん特集(後編)では、能登の地方活性について詳しくお聞きしました。
(後編につづく https://sdums.net/news/5829 )■FREEDOM2詳細
☆-僕らの秘密基地へようこそ!!-☆
【FREEDOM2 ROCK Village】
BACKPACKER’S HOSTEL/ROCK BAR BASE TO FREEDOM2
住所 石川県七尾市和倉タ1-1
TEL 0767-57-5781
HP https://base2freedom.com/
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Elica(石川県金沢市在住)
建築会社、イベント会社、印刷会社などでの勤務を経て、エスダムスメディアJAPANへ。
『誰かの想いを形にして世の中に届けること』に面白みとやりがいを感じています。
今回特集した石田さんとは、2013年に「NOTOFes.2013」を共に主催し、能登で大型イベントを開催しました。
*記事内の写真 引用)「FREEDOM2」Facebookより*
会社概要
代表者:山口 貴子
所在地:石川県金沢市森山1-2-1 FW202
業種:サービス業—PR業務
電話番号:050-3204-0372
関連URL
https://sdums.net