【女性×ベンチャー】偶然のきっかけが繋がって今の自分がいる。株式会社オフィスリブラ代表取締役 上松 恵子さん特集

違いを活かす「チームビルディング」で組織と人に新たな可能性を広げ、日本の未来に活力を。自身の経験を糧に、マイノリティが生き生きと活躍する組織や社会づくりを支援

 エスダムスメディアJAPANによる、「ベンチャー・女性の活躍・地方活性化」をキーワードとした、ライター独自の視点による特集記事を配信しています。今回は岐阜県を拠点に女性の活躍支援や働き方改革支援を行う、株式会社オフィスリブラ代表取締役 上松 恵子さんに自身の事業や家族のこと、独立に至るまでの経緯をお聞きしました。

  • 株式会社オフィスリブラ公式サイト https://office-libra.com/ (外部リンク)

    株式会社オフィスリブラ代表 上松 恵子さん

     

    • 2度の転職を経験した上松さん。そして自ら会社を立ち上げるまで

    大学の教壇に立つ上松さん

     企業内の女性の活躍や働き方改革を支援するため、講演や研修を主とした活動を行う株式会社オフィスリブラ(所在地:岐阜県岐阜市、以下リブラ)を経営する上松 恵子さん。会社を経営する傍ら、名古屋大学(東海国立大学機構)の招聘(しょうへい)教員や一般社団法人未来マトリクスの事務局長として学生の支援を並行して実施。また名古屋工業大学の大学院生として学生の顔をもつ、多才で多忙な2児の母です。
     大学卒業後、情報誌やインターネットサイトを通じて大学・短大の情報を高校生に伝える仕事に従事。10歳のときからの「雑誌の中の人になりたい!」という夢を叶えた仕事は充実。全力で仕事に打ち込み、人生で一番忙しかったのがこの時期だったといいます。その後、本社へ転勤。営業本部へ異動し、ナレッジマネジメント(※1)システム導入による営業ツールの共有にも貢献しました。
     やがて20代後半で結婚し、第1子出産を経て仕事に復帰しました。このとき、育児と仕事の両立という、多くの女性が経験する壁に上松さんもぶつかります。「仕事が好き、お客様にも会社にも貢献したい。それまでは『24時間働きます!』そんな仕事の仕方しか知らなかった。短時間でしか働けない自分は役に立てていないんじゃないか・・・って、自信がなくなってしまって。そんな葛藤に悩む日々でした。」
     結果として、第2子出産を機に退職を決意。「10歳からの憧れの、大好きな会社だったので、辞めたくはありませんでした。でも、お客様や会社に申し訳ない。子どもにも家族にも申し訳ない。毎日、申し訳ないって思っていました。そして、会社にぶらさがっているような気がして。そんな自分が嫌だったんです。」
     退職後、岐阜の学校法人に転職するも、子どもの小学校進級時に学童に入れなかったため、仕事を続けられなくなり退職。上松さん自身は続けたかった仕事だったので、またしても苦渋の決断でした。「この時期に強く感じたことは、個人の事情ももちろんありますが、社会との関係、会社との関係が否応なく関わってくるということ。自分一人の力ではどうにもならいことがあまりに多く感じ、苦しんでいた時期でした。」
     ここで2度目の転職を経験。在宅勤務で社会課題に立ち向かうNPO法人等を支援する仕事に従事することになりました。この頃に知り合いからの提案もあり、ワークライフバランスの勉強を始めます。この学びをきっかけに、そして、自分自身が感じる社会課題に対して挑戦したいという思いから、30代後半であった平成29年に独立を決意しました。

    (※1)ナレッジマネジメント…個人の持つ知識やノウハウといった「ナレッジ」を組織全体で共有し、組織の生産性の向上などにつなげる経営手法。

    • 「違いを活かすチームビルディングで、日本の未来に活力を!」株式会社オフィスリブラの経営理念

     リブラは、「女性や制約人材の活躍」で、もっと成長し続けられる組織づくりを支援します。女性社員の仕事と家庭の両立に対する不安を払拭し、前向きにキャリア継続を目指せることを目的とした研修や、女性社員をビジネスで活かすために必要な知識などを学べる研修を実施しています。女性活躍推進法に対応した、女性の採用や管理職比率向上を支援します。
     また、会議運営や後方支援などの業務の効率化、業務の効果最大化も支援しています。広報に関するサポートも得意としています。生産性を高めることで時間を捻出し、創造性の高い業務に集中できる体制づくりを支援し、組織が目指すゴールを達成するために最適な道筋を伴走します。

    研修の様子

     上松さんの研修では、ゲームを多く用いるそうです。「ゲームを体験してもらう中で、人それぞれにある強みや特長に気が付き、お互いの違いを活かす経験をしてもらいます。」と上松さん。座学だけではなく、ゲームを通した体験のインパクトが抜群だとか。研修でハッとすることで、継続的に研修の効果が長続きし、成長し続けられる組織づくりが可能だそうです。
     また、上松さん自身も葛藤した、女性社員の仕事と家庭の両立研修もリクエストが多いそうです。この研修では、同じ企業内にいる女性社員同士だけではなく、異なる企業にいる社員を集めた形式。女性社員と上司、女性社員とそのパートナーなど、さまざまな研修の形式があるそうです。両立に対する不安を払拭し、前向きにキャリアを継続できるようサポートしています。

    • 「楽しい」をキーワードに。「やらされ感」ではなく「自分からやってみたい!」と思える内発的動機が高まる研修や講演を心がける

     上松さんにとってお仕事の主軸となるのは、依頼を受けた企業での研修や講演です。「楽しい」「ワクワク」のような、前向きでポジティブな気持ちが生まれるような構成を心がけているそう。
     「楽しい!前向きになった!と研修後に思ってもらい、職場のデスクに戻ってもその気持ちが長続きする事に関して、こだわりをもってやっています。『内発的動機付け』といって、人は内面に沸き起こった興味・関心や意欲に動機付けられている状態の方が持続的に頑張れるという研究結果もありますから!また、柔軟さも大切にしています。長年の営業経験で、お客様が100人いれば100通りと感じています。だからこそ、同じ内容を一方的に伝えるのではなく、目の前の受講者のニーズや状態を理解して、相手にとって一番受け取りやすい伝え方をしたいんです。そのため、様子を見ながら、研修の順番や内容を変えたりもします。自分の性格でずっと変わらない根っこの部分は、人への好奇心と行動力。目の前の人が何に興味があるのか?何がきっかけになりそうか?を観察して、即座に対応する。これも、自分の強み。研修でも、人それぞれの強みを活かしてもらえる研修をしているからこそ、自分の強みも活かしてやっていきたいと思っています。」

    人それぞれの強みを活かせる研修を心がける

    • それぞれの人の強みを活かすチームビルディングを探求すべく、大学院へ進学

     上松さんは現在、名古屋工業大学の大学院に通って、チームビルディングとイノベーションの関係について研究を進めているそうです。「製造業の企業に研修に行くこともありますが、女性は少数派。でも、研修先の企業で、女性の発想や生活習慣から新しいモノづくりが生まれ、大ヒットしたという事例を見て、ハッとしたんです。製造業が盛んな日本で、もっとイノベーションが進むためには、チームビルディングが重要なんじゃないかと。新しいことやものを生み出す時に、同質性の高い人同士で話していても、狭い範囲しか見えない可能性もある。多様な背景を持った人が、ワイワイガヤガヤと話すことで見えてくる景色もあるのでは、と。多様な人の強みを活かすチームビルディングと新しいことやものを生み出すイノベーションには強い関係があるのではと感じています。文学部出身のド文系の私が理系の、しかも工業の大学で学んでいることに自分でもびっくりしますが、異分野の私だから気が付く視点もあるかもしれない。そう思って勇気を持って飛び込みました。」5年前には、ワーキングママという立場に悩んでいた上松さん。しかしながら、今は、さらに学生という新しい立場にも挑戦されています。

    • ひとつのきっかけがまた次のきっかけへ。人生に拡がりをもたらす柔軟な発想と行動力

     上松さんのお話の中で興味深かったのが、「こういう仕事がしたい!」と方向性やゴールを定めて起業への準備をされていたのではなく、周囲から得たきっかけが繋がって現在のお仕事を形成していった点です。
     「今この会社を立ち上げた私がいるのは、まさにプランド・ハブンスタンス(計画的偶発性理論、※2)によるものではないかなと思っています。たまたま声をかけてくれた人から『こういうこと学んだらいいんじゃない?』『この仕事、一緒にしよう!』と言われたことに挑戦したのがきっかけ。そこからたまたまお仕事が繋がっていったんです。」と上松さん。
     一見受動的に見えるきっかけですが、そのきっかけを引き寄せたのも、自身の興味を言葉にしていた発信力や新しいことにも果敢に挑戦する行動力のおかげと感じます。そして、根底にあるのは、自身が長年変わらず持ち続けた仕事への情熱、そして度々の辛い経験が、自分だけでなく「社会全体の問題」と捉え直視してきたからこそだと感じました。そこには偶発と見えるきっかけも、必然のものであるとさえ感じます。
     並大抵の覚悟では行動に移せないことも、「なんとかなるさ」という前向きな気持ちをもって立ち向かう上松さん。プライベートでも、起業をきっかけに、「夫婦の在り方を見直す」という次のきっかけを生み出し、またさらに次のステージへ。これこそプランド・ハブンスタンスの理論に叶っていると感じました。柔軟性をもって転機をポジティブに変換していく強い行動力は、きっとこれからも新たなきっかけを創り出し、仕事に、家族に、人生に拡がりを持たせていくのだと感じました。

    (※2)計画的偶発性理論(プランド・ハブンスタンス)…キャリアプランを明確にせず、行動していくことで偶然巻き起こる事象や出会いによってキャリアアップを見込めるという行動理論。ビジネスに成功した人のうち、偶発の出来事によってキャリアのターニングポイントを迎えた割合が8割にも上ることがわかっています。

    ■株式会社オフィスリブラ概要
    設立年月:平成31年4月(創業:平成29年6月)
    代表者:代表取締役 上松 恵子
    資格:チームビルディングコンサルタント
       育休プチMBA認定ファシリテーター
       育休後アドバイザー
       #起業女子プロジェクト岐阜県担当トレーナー
       岐阜県コミュニティ診断士
    受賞:ぎふ地域ベンチャー支援ネットワーク「NOBUNAGA21ファーストステージ」受賞
       Tongaliアイデアピッチコンテスト「三菱UFJ銀行賞」、「丸紅賞」受賞
    事業内容女性活躍・働き方改革支援
         ・社員の強み・特性診断
         ・働き方改革(基礎編・実践編)研修
         ・チームビルディング研修
         ・メンタリング能力向上研修
         ・仕事と家事・育児の両立研修

    株式会社オフィスリブラ公式サイト https://office-libra.com/ (外部リンク)

    ■編集後記
    取材させていただく中で、「忙しいけど、自分のやりたいことができているからしんどさを感じることは少なくなった」と語っていたのが印象的だった上松さん。彼女のように、結婚・出産を経て自身の仕事への葛藤を抱く女性は多いはずです。「なんとかなるさ精神」で社会概念をとっぱらい、一歩前へと踏み出すその行動力は、先の見えない現代社会を生き抜くヒントに溢れていると感じました。

    ■ライタープロフィール
    サチコ(石川県金沢市在住)
    製薬会社で営業として勤務した後、専業主婦として生活する。2児の母。自分の知る世界とは違う景色を見たいと思いエスダムスメディアJAPANに加入。個性的で魅力的な仲間に刺激を受けながらライター業の面白さ、難しさを体感中。でもSNSは未だに使いこなせない。

    会社概要

    エスダムスメディアJAPAN株式会社

    代表者:山口 貴子

    所在地:石川県金沢市森山1-2-1 FW202

    業種:サービス業—PR業務

    電話番号:050-3204-0372

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