28歳で脱サラし、菓子製造・洋菓子店開業の道へ。地元・能登で起業【ケーキ&カフェ Green One】店主 楠 雅美さん特集
気さくな店主 まーくん、穏やかな時間の流れる店内、食べるとしあわせな気持ちになれる素朴な味のお菓子たち。【Green One】が愛される理由とは?
エスダムスメディアJAPANでは「ベンチャー・女性の活躍・地方活性化」をキーワードとした特集記事を配信しています。今回のテーマは「ベンチャー」。石川県七尾市にある小さな洋菓子店【ケーキ&カフェ Green One】(以下、グリーンワン)の店主、楠 雅美さんを特集します。
筆者(以下、私)がグリーンワンの存在を知ったのは昨年のこと。お店のロールケーキを知人から頂く機会があり、家族で食べたところ、「こんなに優しい味わいのケーキを食べたのは久しぶり!!」と感動してしまうほどの美味しさでした。いつもならスポンジケーキを残す子どもたちもあっという間に完食し、おかわりを要求。「子どもが美味しいと思うものは、間違いない!」私はお店のことを知りたくなり、すぐに店舗検索をしました。味から想像するに、昔から長く続いているケーキ屋さんかと思いきや…まだ8周年を迎えたばかりとのこと!ますますお店のことが気になり、今回店主の楠さんに取材をさせていただきました。










【Green One公式Instagram】 https://www.instagram.com/green_one1978/ (外部リンク)
グリーンワンの店主、楠 雅美(くすのき まさみ)さん。「まーくん」の愛称で、お店の常連客や地元の方々から親しまれています。
- 背伸びしないシンプルなケーキと、宝石のような焼き菓子がいっぱいのお店
お店がある石川県七尾市は、開湯1200年を誇る和倉温泉が有名な町で、日本全国そして海外からも多くの観光客が訪れます。今年は、七尾市が舞台の漫画「君は放課後インソムニア」(著者:オジロマコト氏)がテレビアニメ化・実写映画化されるため、ますます賑わいを見せる地域になるだろうと、私は注目しています。
グリーンワンはJR和倉温泉駅を出て右方面に進み、徒歩約2分の主要通り沿いにあります。大きなガラス窓と、白壁に映える緑のロゴマークの看板が目印です。
お店に入り、優しく出迎えてくださったのは店主の楠さん。とても気さくな方で、心から楽しそうに話す姿、笑顔、大きな笑い声がとても魅力的な方でした。現在、従業員の女性スタッフと共にお店を切り盛りされており、お二人ともお店では菓子製造と接客のどちらも担当しているそうです。
「地元の方が普段使いできる素朴なケーキを作りたい。小さな町のケーキ屋さんでありたい。」と語る楠さん。ショーケースには、17~18種類もの背伸びしないシンプルなケーキが並んでいます。楠さんの朝は早く、6:00にはすでにケーキを作り始め、お店がオープンする10:00までにショーケースをケーキでいっぱいにするのだそう。物価高騰のこのご時世に、200円~300円代のケーキが並んでいることにも驚かされます。以前に少し値上げをされたそうですが、「何度も上げるわけにはいかないなぁ」と、ひとまず今のところは価格据え置きで販売しているそうです。また、小さなケーキの他にも、誕生日ケーキや各種イベントのケーキとしてホールケーキの製造もされています。
グリーンワンでは焼き菓子の製造販売もされています。毎日、ケーキの準備が終わった後は、焼き菓子作りとその梱包に取り掛かるそうです。焼き菓子は1種類からでも購入可能。どれを買おうか悩むほどの種類が用意されています。また、おしゃれなデザイン缶に詰められた焼き菓子のセットも。小さなお菓子たちが宝箱に詰められているかのようで、開ける度にわくわくすること間違いなし!贈り物にも最適です。焼き菓子はオンラインでも購入可能です。
【Green One公式オンラインショップ】 https://greenone.base.shop/ (外部リンク)
店内には購入したケーキやドリンクを楽しむことができるカフェスペースもあります。「借りた物件が大きくてカフェスペースにしているだけで、カフェで儲けようとは思っていないんですよ。なので、何時間でもゆっくりしてください。」と笑顔で話す楠さん。Wi-Fiやコンセントも完備され、本棚には小説もたくさん。落ち着いた空間なので、仕事や考え事をするのにも最適です。地元のご婦人が集まり、女子会が開催されることも多いそう。時間を気にせず話に花を咲かせることができる場所があるのは、とてもありがたいことですね。
このカフェスペースでお店のケーキをゆっくりいただきながら、楠さんにお話をお聞きしました。
・脱サラして菓子製造の修行、洋菓子店開業へ
―お店を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
大学を卒業後、繊維会社で働いていましたが、28歳の時に退職してカフェで働き始めました。ずっと昔から「飲食店の仕事がしたい」という思いがあったんです。カフェでケーキを作る仕事があり、それまでケーキなんて全く作ったことがありませんでしたが、やってみたらケーキ作りが楽しくなって。その後、カフェを1年で辞めてケーキ屋で7年修業し、36歳の時に自分の店をオープンしました。
―転職に対する周囲の反応はどうでしたか?
当時、既に結婚していて妻からは「どうせ止めたって…」という反応でした。家族から反対されたところで、自分の人生だし「自分でやる!」という思いで行動しました。
―カフェからケーキ屋に転職されたのは何か理由があったのでしょうか?
カフェは夜になるとお酒の提供があり、お酒の相手をしないといけないので、管を巻くお客さんを見て呆れたこともあり…カフェは大変だなと思いました。ケーキを食べている人は皆幸せそうな顔をしているのがいいですよね。
修行させてもらったケーキ屋さんは、昔から地元にあるお店で、そこでケーキ作りと焼き菓子製造を7年に渡りしっかり教えていただきました。
地元のケーキ屋さんで長年修業された楠さんの作るケーキは、どれも優しい味。何かこだわりがあるのかお聞きしたところ「無添加にこだわっているわけではないですが、不要な物は入れない。当たり前のことをしてケーキを作っているだけです」とのお返事が。使う食材も知り合いから購入しており、地元の食材もよく使用されているそうです。 |
―そして2014年11月開業。自身のお店を開業する際、大変だったことはありますか?
一番大変だったのは、お店の物件探しでした。物件を借りてお店をしようと決めていたのですが、不動産屋さんに行っても物件が見つからず、車でグルグル回って空き家やテナントを探しました。見つかったとしても貸し物件ではないところも多く、直接交渉するために大家さんを探す…なんてこともありましたね。何回も直接交渉して貸していただいた物件が今の店舗です。
―開業に不安はありませんでしたか?
「自分の責任で仕事をやりたい」という思いの方が強かったです。ケーキを作ることが好きなら、ずっとケーキを作るためだけの仕事に就けばいいけど、そうじゃなくて「お店を持ちたい」と思いました。好きなことを仕事にするために大変なこともあるけど、それがまた楽しいんです。
―店名の由来を教えてください。
名字が楠なので「1本の木に人が集まってくるようなお店に」という意味を込めています。開業準備に追われていて、全く店名を考えておらず、税理士さんから「明日開業届を出すから早く店名を決めて!」と急かされて決めた、というエピソードがあります(笑)
お店のロゴマークは、修行先のケーキ屋さんの娘さんが店名に合わせて作ってくれました。人形もケーキ屋のおばちゃんが羊毛フェルトで作ってくれました。この細いサンタクロースは僕です(笑)
―仕事の一環でSNSの発信も積極的に行われていらっしゃいますが、SNSに対して抵抗などありませんでしたか?
最初は抵抗があり、顔も出していませんでしたが、「お店のために」と積極的に活用しだしたところ楽しく感じてきました。SNSをやり始めて直接気持ちを伝えてもらえる機会が増えたので嬉しいですね。コメントをくれたり、ケーキを食べている写真をDMでもらったりします。
SNS発信の効果で、地元の方だけでなく、県外からもお客様が来られるようになりました。近い所だと、富山県の高岡や氷見など。七尾で遊んだ帰りに手土産を買いに寄られるのかな。あとは、北陸新幹線効果で能登まで遊びに来る人や、外国の方が増えたなぁとも感じていますね。
店頭で販売中の一口サイズのカヌレ。若手俳優ご夫妻がおしのびでお店に立ち寄り購入したとのこと…!気になる方は、お店でカヌレを買いながら楠さんにこっそり聞いてみてください♪ |
―洋菓子は常に流行りがあり勉強が必要な業界だと感じますが、何かされていることはありますか?
コロナ禍でしばらく行けませんでしたが、昨年東京でお菓子巡りをしました。「これいいな」と思うものは、地元の方の口に合うようにアレンジしてメニューに取り入れたりしています。
―2024年に10周年を迎えますが、感じていることや今後の展望をお聞かせください。
少しずつ地元での認知が高まってきましたし、SNSのおかげで他県からも認知されるようになってきました。一時期よりコロナが落ち着き、イベントのケーキなどのご依頼も増えてきました。ありがとうございます。
たまに、「自分よくケーキ屋になったよな」と思うことがあります。イメージと違うのか、自分の職業を知らない人にケーキ屋だと伝えると驚き固まられることもありますし(笑)ですが、今はケーキ屋になって本当に良かったと思っています。長期休みの後に、久しぶりにケーキを作ると「ケーキ作りはやっぱり楽しいな」と思うんですよね。このまま体が動くまでケーキ屋をやっていきたいですし、お店をこの地に根付かせていきたいです。生涯現役。きっと宝くじが当たってもお店は続けるだろうと思います。
自分の性に合い、自分の好きなことができて、それを仕事にできているのは本当に幸せなことだと思っています。
グリーンワンではイベントの際に、チェーンフラワー大作戦を行っています。プレゼント用のお菓子にお花を添えて、笑顔の輪が広がるお手伝いをされています。「うちのお菓子を選んで下さったあなたとあなたの大切な人たちが幸せでありますように」という楠さんの想いです。 |
■店舗詳細
「ケーキ&カフェ Green One」(店主・楠 雅美さん)
住所:石川県七尾市石崎町レ部31-1
TEL:0767-62-1502
営業時間:(月曜・水曜~金曜)10:00~19:00 (土~日曜・祝日)10:00~18:00
定休日:火曜、第1・3月曜
駐車場:9台
Instagram: https://www.instagram.com/green_one1978/ (外部リンク)
Facebook: https://ja-jp.facebook.com/greenone1978 (外部リンク)
オンラインショップ: https://greenone.base.shop/ (外部リンク)
■編集後記
「自分の性に合い、自分の好きなことを仕事にし、今置かれている状況が本当に幸せだ」と語る楠さん。いきいきと楽しそうに話をしている姿からは、仕事への熱い想いが伝わってきました。多様な働き方のできる現代、会社勤めを辞めて自分で仕事をしたいと考える方も多いと思います。そのような方々への気持ちの後押しにもなるような貴重なお話でした。
美味しいケーキもご馳走様でした。ありがとうございました!
■ライタープロフィール
Elica(石川県金沢市在住)
建築会社、イベント会社、印刷会社などでの勤務を経て、エスダムスメディアJAPANへ。
『誰かの想いを形にして世の中に届けること』に面白みとやりがいを感じています。
まだまだ知られていない『いいもの』が世の中に伝わっていきますように。
会社概要
所在地:石川県金沢市森山1-2-1 FW202
業種:サービス業—PR業務
電話番号:050-3204-0372
関連URL
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