身近なものをモチーフにした型染め作品を制作【金沢発・女性の活躍】染・図案家 山﨑 菜穂子さん特集
素材を扱う楽しさから染色へ。人に使ってもらう「物」作りを模索中
エスダムスメディアJAPANでは、「ベンチャー・女性の活躍・地方活性化」をキーワードとした特集記事を配信しています。今回のテーマは「女性の活躍・地方活性化」です。
石川県金沢市で染・図案家として活躍されている、若い女性がいらっしゃいます。型染め制作をしながら、アトリエでワークショップと販売をされている山﨑 菜穂子さんです。ある日偶然山﨑さんのお店「Hodesu(読み:ホデス)」の前を通りがかった筆者。気になる気持ちそのままに取材の申し込みをしたところ、快くお受けいただけました。










【NAHOKO YAMAZAKI dyeing works/山﨑 菜穂子 公式サイト】https://zakiponn.wixsite.com/nahokoyamazaki

制作風景「山脈」
染・図案家 山﨑 菜穂子(やまざき なほこ)さん
1988年 神奈川県生まれ |

作品写真「リンゴ」
石川県金沢市東山地区は観光地としても有名ですが、浅野川に沿って一本奥の通りに入れば、町屋が連なる喧騒とは離れた穏やかな通りがあり、あちこちに個性的な小売店が見られます。ある日、筆者が通うお店でパンを買って、郵便物も出そうとポストを探すと、歩いてすぐの場所に小さなポストを見つけ投函…しようと思ったらそこに気になるファブリックを陳列してある小さなお店が。
おおお!筆者の心が鷲掴みにされるその佇まいと、ファブリック達。これはこのまま通り過ぎてしまうことはできないぞ…!すみません、こんにちは、、、(勇気を出して入店)
- 金沢に移住するまで
山﨑さんが金沢に来られたのは、2011年。卯辰山工芸工房(https://www.utatsu-kogei.gr.jp)へ技術研修生として入所したのがきっかけです。
大学卒業まで関東で過ごされた山﨑さん。大学卒業後は就職し、制作は仕事とは別でも続けられればと考えていたなか、創作活動を続けたいという思いを知る友人から卯辰山工芸工房の存在を聞き、その時期にたまたま卯辰山工芸工房を出られた方が先生になったこともあり、全国でも珍しい存在である工芸活動を支援し発信する工房の試験を受けることにしました。
山﨑さん)
父方の祖母は洋裁を、母方の祖母は編物をしていたので、小さな頃から手芸の材料が身近に揃っている環境でした。小さな頃から手をかけていろいろ何かを作っていて、作り上げた時がとても楽しくて、それでずっと作り続けていました。絵を描くより物を作る方が好きなんだなと気づいたのは小学校の頃です。その頃から、大学では物を作ることをやりたいなと思っていました。中学校3年の時の担任の先生が技術の先生だったのですが、物を作る進路が向いているのではないかと勧めてくれて、その時は物を作るかデザインをするか、枠を狭めず美術を学べる高校へ進学することにしました。進学した高校にはデザイン専攻と絵画専攻があり、授業の中で平面構成や油画を学びましたが、平面構成の多いデザインの授業よりも、キャンバスに絵の具を重ねて描く絵画の方が楽しく感じる自分を知りました。そして、キャンバスや絵の具の質感に創作感を沸き起こされる自分に気づき、素材を扱うという事が自分にとって興味がある事なのかも、と感じました。そこで大学は、いろんな素材を扱える工芸科を選びました。工芸科で学ぶ中、陶芸と染めのどちらを専攻するか迷ったのですが、形を作る感覚で模様を染める、型を用いた染めに興味を持ち、染専攻を選びました。

「リンゴ」糊置き
- 大学卒業後、全国でも珍しい、工芸活動を支援する工房のある金沢で制作活動を続けることになった、山﨑さん。金沢での活動についてお聞かせください。
山﨑さん)
2011年に初めて金沢へ来て、卯辰山工芸工房を中心とした生活を3年送りました。住んでみるととても良い所で、工芸活動もしやすい土地でした。大学まではほとんど染めることが中心だったのですが、工房の先輩との繋がりで展示をする機会をいただき、染めるだけでなく作品を発表する場が増えていきました。3年の活動の間に、染めて人が使うものを作り、展示をするという流れが出来ていきました。展示では、次はこんな物を作って欲しいなどさまざまな声をいただくことができ、そこから次作への創作意欲をもらえていました。展示で作品を見てくれる人(存在)がいるということが自分にとってとても大きな役割をしてくれていると感じましたし、もっとその方達の要望に応えていきたいとも思いました。ちょうど工房を退所する1年後に北陸新幹線が開業する事もわかっていましたし、それによって金沢がどう変化していくのか見たい気持ちもあり、そのまま金沢で制作活動を続けることにしました。土地勘のある東山付近で川沿いにある町屋を探し、現在のお店となっているこの場所で制作を始めました。
展示だけでなく、お店でお客様と会話し顔を見てその方が使ってくれることをイメージしながら制作するのが楽しい、と話す山﨑さん。
「型染め」は、切り絵のような型で模様を作り、その型を布の上に置き、糊をつけて染まらない部分を作り、染液を刷毛(はけ)で引いて染めていく技法です。日常使いできる物を作っていきたいと考えている山﨑さんは、染料も堅牢度(けんろうど)の高い物を選んでいます。そして、型となるモチーフは山﨑さんが「面白い」と感ずる、独特な目線から見えたさまざまな身近にあるものたちとなっています。
その独特な感性は大学時代から評価を受け続け、金沢での制作活動でさらに磨かれ、多くの共感を呼んでいます。山﨑さんは、自分は常に進行形なのだ、と話されます。

教室の様子(型彫り)

教室の様子(色の調合)

教室の様子(引き染め)
山﨑さん)
自分が気づいた「生活で面白い形を見つけ模様にすること、生活を楽しむものを作りたい。」という気持ちを元に、これからはメインの制作である型染と共に、それ以外でも気になる素材やものは使っていきたいと思っています。
お店についても、自分の作品だけでなく、自分が使っていて楽しいものを取り扱い紹介していきたいと考えています。
これからどんな「身近にある興味深いモチーフ」が山崎さんの独自の目線で切り取られていくのか、そして、山崎さんのセンスで常に進化するアトリエ兼店舗「Hodesu」のこれからの展開とは?
山﨑さんの今後の活動に、目が離せません!
アトリエ・ショップ・型染教室「Hodesu」店主、染・図案家 山﨑 菜穂子さん
所在地:石川県金沢市東山3-14-22
お問い合わせ先:hodesu9@gmail.com
公式サイト:https://hodesu9.wixsite.com/shop
Instagram:https://www.instagram.com/nahokoyamazaki/ (個人)
https://www.instagram.com/hodesu_shop/ (Hodesu)
【催事案内】
cross the theme
木下 幸(漆)
新城 すみれ(染)
田中 若葉(漆)
山﨑 菜穂子(染)
それぞれが扱う、植物、動物、人、幾何学などのテーマ。本展では普段扱うテーマに加え、それを横断して制作した作品も並びます。
2023年8月31日(木)〜9月10日(日)
11:00〜17:00(最終日は16:00)
月曜定休
金沢・クラフト広坂2F(金沢市広坂1-2-25 金沢能楽美術館内 北鉄バス広坂下車)http://www.crafts-hirosaka.jp/
※お問い合わせは、公式サイト内フォームまたは各種SNSにてお願いします。
■編集後記
シンプルで、心がほっこりするモチーフ。北欧調にも似たナチュラルな色合い。ハッとする切り口で、私たちに楽しい驚きをもたらしてくれる山﨑さんの作品の数々。
自分の「好き」をとことん探求するその姿はとても素敵で羨ましく、そしてこれからどんな進化を遂げて行かれるのか、山﨑さんのセンスがどんな形となって私達の前に現れるのか、大変楽しみです。
風合いや色味は画像ではなかなか伝わりにくいもの。ぜひとも一度会場でリアルな作品達に触れて、見ていただきたいと思います。そして、たくさんのお客様と山﨑さんとの対話という化学変化から、心がウキウキする作品が次々と生まれることを願っています。
■ライタープロフィール
Sachienne(金沢市在住)
大切にしている事は、家族を大切にそして自分の人生を楽しむこと!
コロナ禍を転機にすべく、楽しみながら仕事ができるエスダムスメディアJAPANへ飛び込み、自分の新たな可能性を見つけられたらと日夜励んでいます。
会社概要
代表者:山口 貴子
所在地:石川県金沢市森山1-2-1 FW202
業種:サービス業—PR業務
電話番号:050-3204-0372
関連URL
https://sdums.net