出会った人たちに「心の種まき」を。「トントゥ」のワークショップ活動や、石川県金沢市「源農園」で農業に従事するなど、さまざまな分野で人々に笑顔を届ける「たみちゃん」こと橘 多美子さん特集
あるときは「トントゥの森」、あるときは「林業女子」、あるときは「農業女子」のたみちゃん!
エスダムスメディアJAPANでは「ベンチャー・女性の活躍・地方活性化」をキーワードとした特集記事を配信しています。今回のテーマは「女性の活躍・地方活性化」です。
今回ご紹介するのは、石川県金沢市大野町を拠点とした「トントゥの森」でのトントゥ制作のワークショップ活動を行い、石川県金沢市の「源農園」にて農業に従事する橘 多美子(たちばな たみこ)さん。以前取材させていただいた砂山 亜紀子(すなやま あきこ)さんが代表を務める「もりラバー 林業女子会@石川」の立ち上げメンバーの一人でもあります。石川県の林業・農業の活性化に奮闘する女性のバトンリレーが実現し、取材をさせていただきました。









「トントゥの森」たみちゃん こと橘 多美子さん
【橘 多美子さんInstagram】 https://www.instagram.com/tamitonttu/
【プロフィール】
橘 多美子(たちばな たみこ)さん
石川県白山市在住。保育士として勤務する傍ら、橘さんの従姉が活動していた「トントゥ(※1)の森」のサポート役を務める。のちに自身が主体となりワークショップ等のイベントをスタートし、小松市を中心に被災地の復興支援に取り組む市民グループ「チームこのへん」のメンバーとして被災地にトントゥを届ける活動にも積極的に取り組む。近年は木育関連のイベントにも多数参加。また、砂山さんの誘いを受け「もりラバー 林業女子会@石川」の立ち上げに携わり、子育て期間を経て活動を再開。橘さんの実家である「源農園」で農業にも携わり、加賀伝統野菜の一つである五郎島金時や特産の金沢すいか、長芋トロフィー、人参アロマレッドなどを育てる。
笑顔が素敵でとても気さくな橘さん。今回の取材が初対面であったにも関わらず、筆者は「たみちゃん」と呼ばせていただくことに。以下、たみちゃんと記載させていただきます。
(※)トントゥ…サンタクロースが住むフィンランドの森や動物たちの小屋に棲んでいる妖精。家の人々がいつも楽しく過ごせるように火事や病気からも守ってくれる働き者で、クリスマスが近づくとサンタクロースのお手伝いも。

フィンランドの妖精「トントゥ」
- フィンランド出身の妖精「トントゥ」を通して人々に笑顔と元気を
-どのようなきっかけで「トントゥの森」の活動を始めましたか?
たみちゃん)
最初にトントゥの活動を始めたのは従姉でした。フィンランドのお土産としてトントゥを日本に持ち帰った際、「石川県の材料で作れたら」と考えたことをきっかけに、運良く地元の木材屋さんを紹介してもらえることになり活動がスタートしました。その頃私は保育士として働いていて、2児の母である従姉の子守り役として、トントゥ作りのワークショップのお手伝いをしていました。
そのうち従姉が忙しくなり、トントゥの活動を一旦休止することに。でも私はこんな素敵な活動をやめてほしくない!と思ったんです。その頃はまだ保育士として働いていたので、従姉の道具を借りて週末できるときにワークショップをやりはじめました。そうすると、参加してくれた人たちから「可愛い!楽しい!」という反応をいただいたんです。それがとても嬉しくて。この活動を続けたい!と思いました。後に、約10年続けた保育士の仕事に区切りをつけ、トントゥの活動や実家である源農園での農業、そして林業女子会などいろんなジャンルの活動をするようになりました。
-ワークショップの際に気を付けていることはありますか?
たみちゃん)
トントゥ作りのワークショップは、あらかじめ斜めにカットしておいた丸太の断面に顔を描きます。参加者の子どもには、顔も胴体も自分のやりたいように自由に描いていいよ、と伝えます。基本的な説明をして、分からないことがあれば呼んでね、と子ども達にお任せするんです。
親子で一緒にトントゥを作る場合、親は子どもに出来栄えをついつい求めてしまうことがあります。そんなとき、「子どもの今の年齢で、今描きたいものを大切にしてあげませんか?」と伝えます。お金はかかってしまうけど、お互い一体ずつトントゥを作ったら満足できますよ!と提案することもあります。そうすることで子どもも大人も、自作のトントゥに大満足してくれるんです。
トントゥ作りに限らず、大人の考え方で物事を進めてしまうと、子どもが「こうしたい」と思っていることができなくなり、子どもの芽を摘んでしまうことになります。摘んでしまうのではなく、伸びてほしい。子どもへの声かけや提案一つひとつに工夫をしていけば、子育てはもっと楽しくなるし、子どもも笑顔になれる。何かをしてもらったときに「ありがとう!」の言葉が素直にでてくる子どもになれると思うんです。このような考えをもってワークショップができるのも、保育士として子どもと接してきた経験が活きていると感じています。
子どもだけが変わるのではなく、親も変わる必要があると感じています。これからの未来を託される子ども達に、頑張れる子に育ってほしいから。トントゥの活動を通じてその一助ができたらと思っています。そんな「心の種まき」を、私が出会える人たちにずっとしていけたらいいなと思っています。そして芽が生えてきた人は、次出会えときに「たみちゃん!」とか「大好き!」と声をかけてくれる人なんだろうなと思っていて、「あのときはありがとう!」と伝えています。

(左)工房となっているご実家の倉庫(右)近所の木材屋さんでトントゥ用の丸太を提供してもらっているそう
-「チームこのへん」について教えてください。
たみちゃん)
石川県小松市を中心に被災地の復興支援に取り組む市民グループ「チームこのへん」は、約10年前に誘ってもらって活動をスタートしました。それまでは災害が起こったときに義援金を寄付するくらいしかできませんでしたが、「チームこのへん」のメンバーとなり、福島県の被災地にトントゥと一緒に行ってワークショップを行うことができました。参加者の方々と一緒にトントゥに顔を描き、最後には皆笑顔で自作のトントゥを持ち帰ってもらうことができたことは、今でも大切な思い出です。5年後にまた福島県に行くことができ、当初ハイハイをしていた子が大きくなっていて。成長した姿を見ることができたのも感慨深かったです。そしてこうやって、自分が被災地に足を運び、そこで経験したことや感じたことを、地元に帰ってから皆に話せることが大切だなと感じています。

どちらもたみちゃんの手作り。(左)「トントゥの森」ウェルカムボード(右)Instagramフレーム
工業高校の工芸科に通っていたというたみちゃんが作るトントゥは、大小さまざまな大きさがあり、どれもコロンとした可愛いらしい外観で、見る人みんなが笑顔になるような表情を浮かべています。何度も練習を重ねてたどり着いたというたみちゃんのトントゥは、取材でお邪魔したご実家のある金沢市大野町の至るところに笑顔で佇んでいます。
大野地区は古くから外港として栄え、また醤油の産地として蔵元も多く存在し、特色ある街並みに近年観光客も多く訪れるエリアです。そんな地元の蔵元の販売所にトントゥが置かれお客様をもてなしている風景がとても魅力的でした。地元の方に「大野の伝統工芸品になるよね」と言ってもらえときは本当に嬉しかったそう。また地元のイベントで出店したりお手伝いに加わるなど、地元との繋がりも大切にしているたみちゃんの人柄が、古き良き大野の街並みからも伝わってくるように感じました。
- 林業女子としての「たみちゃん」
-「もりラバー 林業女子会@石川」(以下もりラバー)の立ち上げメンバーになったきっかけを教えてください。
たみちゃん)
もりラバー代表の砂山 亜紀子さんが、石川の林業女子会の立ち上げメンバーとして探していたのが私の従姉だったんです。その頃ちょうど従姉が子育てで忙しくなり、トントゥの活動も休止する頃でした。それで私を誘ってくれたんです。
林業女子会というだけあって、市で行われる林業に関する会議などに出席することもありますが、最初は内容がとても難しくて(笑)。でも回数を重ねるたび、会議の中で発言できるようになりました。私は皆と同じ答えは出せないけど、自分が思ったことを言えるようになったので、それは自分にとってプラスになりました。立ち上げ後すぐに出産となりしばらくは本格的な活動ができませんでしたが、活動の段取りなどを一緒に考えたり、できることをやっていました。「できる人ができる時にできることを」という精神で活動するもりラバーでは、メンバーはみんな横並びです。全国各地にある林業女子会の中でも魅力的と言われます。
砂山さんはお姉さんのような存在でありながら、心が弱ったときに悩みを吐き出し、励まし高め合える大切な存在。これからも一緒にもりラバーを盛り上げていきたいです!
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- 農業女子としてのたみちゃん
広大な敷地をもつ源農園では、粒度の細かい砂地を利用してさまざまな野菜を育てています。五郎島金時や金沢すいか、粘りの強さと甘味が特徴の長芋トロフィー、そしてフルーティーな香りが特徴の人参アロマレッドなどを出荷しています。源農園の畑があるかほく市は金沢市に程近いものの、気温が2度ほど違うそう。また砂地の粒度も金沢市の海側より細かいため、その土地に合わせた育て方を研究し野菜を育てているそうです。

(左)源農園(右)たみちゃんと人参アロマレッド
-家族で農園を営む環境で育ったたみちゃんにとって、農業とはどのような存在ですか?
たみちゃん)

猫草の鉢ワークショップを開催
子どもの頃は、実家の農園で育てる野菜に囲まれて育ったことで、野菜が嫌いだったんです。でも大人になって自分も農業に携わるようになって、「うちで育てた野菜はこんなに美味しかったんだ!」と気付いて。今ではインスタなどを通じて、日々の作業の様子を伝えたりしています。「農家さんでは、すいかはこんなふうに大切に育てているんだよ」など、農園で野菜が収穫されるまでの様子を知ってもらうことで、その価値をより深く知ってもらえたらと思っています。
また、金沢農女(ノマジョ・カナザワ)の活動にも参加しています。金沢市内の60名近くの女性農業者が活動していて、それぞれが愛情込めて作った農産物や加工品をイベントで出店するなど、金沢の農業や農産物を知ってもらうための活動を行っています。
ノマジョで知り合った方が保護猫活動をされていて、猫草を育ててくださっているので、農家さんとお客さんとを繋げるきっかけとして、猫草の鉢ワークショップを開催したこともあります。猫草の鉢に好きな模様や絵を描いてもらうワークショップです。私を通してですが、農家さんとお客さんを繋げるお手伝いができたらなと思ってやっています。そしてこうした「繋がり」がとても大切なことだと思っていて、私がこれからもやっていきたいことの一つです。
また、黙々と畑仕事をしている時、いろいろな考えをめぐらせることもあります。「あのときはどうすれば良かったのかな」「どんな言葉をかけてあげれば良かったのかな」など、日々の活動で生まれる悩みなどを畑の土の中に吐き出してしまう(笑)。それを丸ごと受け止めてくれる偉大な畑は、頼れる存在です。
農業は大変なこともありますが、販売したときに地元の野菜を「美味しい」「大好き」と言ってリピーターになってもらえると、「育てて良かった」と思えるし、私の元気の源になります!!

(左)金沢すいか(左)長芋トロフィー
■編集後記

取材時に描かせていただいたトントゥ。次はワークショップに参加したいです!
初対面の私にも、まるで以前から知り合いだったかのように、エネルギッシュな会話と自然な笑顔で接してくださったたみちゃん。それは取材に訪れた私だけではなく、初めてたみちゃんに出会った人たち皆がその魅力を感じ、自然と笑顔がこぼれるのだろうなと思いました。2回にわたる取材の後、「スイカ食べてみて~!」と連絡をくださり、源農園の立派なスイカをいただくことに。シャリシャリと一口食べると口の中に広がる爽やかな甘みとみずみずしさは、愛情こめて作られた農家さんの努力が詰まっているのだと感じました。私の息子はお友達とスイカの種飛ばしを楽しませていただきました(笑)。
取材時に描かせていただいたトントゥは、可愛らしい笑顔で家の中で佇んでいます。「肩書はひとつじゃない、私はたみちゃんとして活動しています」とおっしゃる笑顔がとても素敵で、これからも多岐にわたる活動を通して、たくさんの人々に笑顔を届けてくれるのだろうと感じました。老若男女問わず愛されるたみちゃんに、ぜひ多くの人が出会ってほしいなと思わずにはいられませんでした。
■ライタープロフィール
サチコ(石川県金沢市在住)
製薬会社で営業として勤務した後、専業主婦として生活する。2児の母。自分の知る世界とは違う景色を見たいと思いエスダムスメディアJAPANに加入。個性的で魅力的な仲間に刺激を受けながらライター業の面白さ、難しさを体感中。でもSNSは未だに使いこなせない。
会社概要
代表者:山口 貴子
所在地:石川県金沢市森山1-2-1 FW202
業種:サービス業—PR業務
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